代表取締役 高橋 雅彦

経歴

出身:千葉県船橋市

1988年03月 早稲田大学 理工学部卒業
1988年04月 日本債券信用銀行(現 あおぞら銀行)入行。
                          M&A仲介、不動産証券化、事業法人営業(新規
                          開拓)、医療福祉チーム課長などを歴任
2004年08月 あおぞら銀行 退社
2004年09月 株式会社ドクタートラストを設立、社長就任。
                          現在19期目
地域貢献:     渋谷区松濤町会 理事(衛生、環境・公害部長)
趣       味:     仕事と盆栽(日本盆栽協会 会員)

ドクタートラストを設立した目的

銀行時代の経験

 前職の銀行員時代にバブルとバブル崩壊にともなう銀行の破綻を経験しています。特に不良債権回収の仕事をしている同僚たちのストレスは半端なく、病気で休職する人が増え始めました。尊敬する先輩が過労死したことを聞かされた時は、何もできなかった無念を感じ、「働かせ方」が原因で人が死ぬことがあるんだと大きくショックを受けました。
 銀行を退職する日まで私は病院融資を行う営業部門の課長をしていました。全国の病院経営者(病院長)と商談をする機会に恵まれ、医療業界が自動車業界を上回る日本で最大のマーケット規模でかつ成長率が最も高い業界だと知りました。
 日本は超高齢化社会となり、団塊の世代が寿命を迎えるまで、医療費は確実に毎年増加していきます。公費の負担は莫大です。その後、少子化の影響で、国内最大規模の産業が一気にマイナス成長に転じることになります。しかし、ほとんどの病院経営者には危機感がないことに不安を強く感じています。
もし国が医療費を負担できなくなれば、世界に誇る「国民皆保険制度」は破綻します。
現在の3割負担制度はなくなり、全て患者負担となるか、企業が7割程度の医療費を、国に代わり肩代わりすることになるでしょう。
企業としては、社員が病気にならないように、今まで以上に健康経営に力を注ぐ必要が高くなり、病気にならないための対策が徹底されることになると考えています。

そして会社設立へ

 私は独立起業するぞ!という意思がそれほど強かったわけではありません。
 ただ、これから大きな改革が必要な「医療業界」と「医療経営者」が変わっていかざるを得ない未来に強く魅力を感じ、もっと深く広く係わっていきたいと思っていた矢先に、大阪支店転勤の辞令が発令され、後先も考えず、退職願いを出してしまいました。
 2004年8月末に退職し、同年9月には商業登記が完了し、
社名を「医者に託す」という思いを込めて「株式会社ドクタートラスト」としました。

産業医サービスの開始

 2004年の会社設立時は、病院やクリニック、調剤薬局、治験会社など、十数社の経営コンサル業からスタートしました。
この時、ご契約いただいたある企業の経営者から、「高橋さんの今の商売は、ただの個人ビジネスで、その日暮らしの『稼業』でしかない。何か事を成そうとする思いがあるなら、直ちに人を雇い、『事業』を始めるべきだ」とアドバイスを頂き、病院に医師を人材紹介する『事業』を開始しました。しかし、医師の人材紹介業は、求人は多数あるものの、医師の人材確保に苦労し、従業員を雇える水準にまでは至りません。
 そんな時に、銀行時代の元上司で大手損害保険会社の役員に就任していた方から、『産業医』を探してほしいとお電話を頂きました。
たまたま、知り合いの医師が、産業医の免許を取得したものの、企業とのコネが一切なく、仕事がないと言っていたことを思い出し、
その日のうちに、契約がまとまりました。
この時、今の産業医サービスのように社員を100名近く抱える『事業』に成長するとは私自身まったく思っていませんでした。
お世話になった元上司への恩返しのつもりで、また病院へ人材紹介をする医師とのネットワークが広がれば十分という思いから、
ボランティアの精神で、本業の経営コンサルの合間に時間を作りながら始めたことが、
結果的には長く続くビジネスになったのだと思っています。

産業医サービスの運営方針

現在、産業医契約企業数は全国3,000社を超え、契約医師も約1,000名となっています。産業医サービス業界のパイオニアとして創業から18年間ずっと全国1位を維持しています。

弊社は自ら営業を一切致しません。元々がボランティアで始めた事業だし、医師が自ら営業したり売り込んだりというのは違うだろうと考えているからです。
結果、Webサイトからご相談を頂いたり、契約企業からのご紹介や、契約企業の人事の方が転職した先の企業など「ご依頼を頂けたら、募集を開始する」という受け身スタイルでこれまでずっとやっています。
2006年の長時間労働者医師面談や2015年のストレスチェックの義務化、健康経営推進などが追い風となり、お陰様で、創業時から現在まで、毎年契約企業数は着実に増え続け、法律に守られているということもあり、解約もほとんどなく、計画的な経営ができるようになっています。

産業医に支払う報酬については、病院勤務医のアルバイトの時給は概ね1万円が相場ですが、弊社の産業医には、2万5千円から3万5千円と高めの水準に設定しています。
このため、1社の募集に対し、都内であれば平均で30〜40名の産業医がエントリーして下さり、その中の1名だけが採用されるという方法で、産業医の質を高く維持しています。

産業医サービスを行なっている同業者の料金体系(月額委託料)は、ほぼ弊社と同水準になっています。
弊社が頂いている産業医選任手数料10万円を無料にしているケースが見られますが、
その代わりに産業医に支払う報酬は、時給1万円から2万円の水準のところが多く、
「ドクタートラストで契約が決まることは極めて難しいけれど、産業医としては一流の証だ」と嬉しいことを言ってくれる先生方に支えられてこれまでやってきています。

全国第1位の産業医紹介会社から、全国第1位の健康管理会社への挑戦

2015年12月から産業医が実施者となる「ストレスチェック」が義務化されたことをきっかけに、弊社はストレスチェック事業に参入し、現在7年目を迎えています。

当初、私はストレスチェックがストレスになるのではと、正直あまり乗り気ではなかったのですが、産業医契約のある弊社でワンストップで対応してほしいという取引先の声に押されて渋々開始したといういうのが本音です。

しかし、ストレスチェック元年が終わり、膨大な個人データを分析してみると、様々なことが数字として現れていることに驚き、職場環境を改善することができる可能性を強く感じました。
特に集団分析結果については、部署ごとの特徴が数字として鮮明に表現され、社員の「働きがい」「ワークエンゲージメント」を阻害している要因や、組織としての強み・弱みなど、企業経営者が最も知りたい自社の社員の「心や体の情報」の宝庫だったのです。

2017年には、社内に「ストレスチェック研究所」という組織を立ち上げ、ストレスチェックを受検して頂いた全ての企業や官公庁に対し、結果のフィードバックを無料で開始しています。
すると多くの企業から、有料でも構わないので、もっと詳しいデータや、なぜこの部署に限って離職者が多いのか原因分析をしてほしいなど、フィードバックを終え、帰社した弊社社員たちが次々と目を輝かせながら、取引先の課題や問題を解決したいと言い始めました。

「職場環境を改善する」「働きがいのある職場をつくる」ストレスチェックは、働く人たちを元気にするための、おそらく世界中で最も最大規模の「心と体のビックデータ」であり、日本中を豊かな社会に変えていくことができる最強の国家プロジェクトなのだと私は確信しています。


コロナ禍において、社員のストレスは実は低下していることや、現在、最もストレスが高い業界は運輸業であり、逆にストレスが最も低い業界は郵便事業であることなどをプレスリリースしたところ、多くのメディアに取り上げられ、ストレスチェックのドクタートラストとして国内の人事担当者に知ってもらえるきっかけにもなっています。

2021年度には、単年で32万人の方々が受検していただき、累計で122万人の個人データが社内に蓄積されています。

また、「高ストレス者」の対極にいる「低ストレス者」に着目した研究から、
組織には周りに良い影響を与えながら、ストレスを自身の成長のエネルギーに変え、自ら生き生きと働くことができる人が10〜15%いることがわかり、
私たちは、その人材を「STELLA(ステラ)」と名付け、組織改革を行う中心人物とすることで、これまでにない新しい組織改革コンサルティングサービスを開始しています。

産業医という土台の上に、ストレスチェックをベースとした「生産性向上」や究極の「メンタルヘルス対策」になり得る「STELLA(ステラ)」コンサルに注力することで、国内第1位の産業医紹介会社から、さらに発展した国内第1位の健康管理会社になれるよう日々、楽しく働いています。

国内ぶっちぎりトップの「はたらきがいのある会社」にする

ストレスチェック研究所(略してS研)の研究成果は、まず我々ドクタートラスト自身の社内の雰囲気を大きく変えました。

社内で行われるストレスチェックの結果、「STELLA(ステラ)」として任命された社員に対し、社内研修で唯一の任務として
与えられたことは、自分の部署内で「雑談」を増やすこと。だけです。

元々、雑談も主張も多く、周囲の人に良い影響を与えている「STELLA」にとっては、雑談を増やすことなど容易いミッションです。
そして、なぜ雑談を増やすべきなのか、「STELLA」になった全員に理解してもらうためのグループワークを約3ヶ月間に亘り開催してみました。

「STELLA」による「雑談」を増やすという活動は、他の社員や上司にも伝えられ、それまで先輩社員や上司との距離を縮め切れていない入社間もない新人社員を中心に大きな変化が現れ始めます。

新人社員の雑談頻度が増えてくると同時に、業務上の「質問や相談」も増え始めます。
その頻度が増えることで、周囲にいる先輩社員は「教える」頻度が増え始めます。

これまで半年、1年と「周囲の様子を見極めるために必要だった(会話を減らしていた)、ストレスの高い時間・期間」が一気に解消され、言いたいこと、聞きたいことが、忖度することもなく、気楽に、雑談レベルの会話として増えてきます。すると、新人社員の成長スピードが驚くくらい速くなります。

社員同士や上司部下の垣根が低くなると、チーム内の社員間での信頼感が高まり、互いに助け合う、思いやる、仕事を共通の課題として捉え、チームとして団結するようになり、情報共有が進み、その結果、生産性向上につながります。

事実、社内の雰囲気は昔に比べ仕事量が増えているにも拘らず、とても明るく(うるさく)なり、残業も減り、所属部署内外でコミュニケーションが活発に行われるようになりました。

実際に、個人個人の能力は高くても、チーム内でその実力を100%発揮できるということはなかなか難しく、思っていることをその場で直ちに発言できない空気が日本の企業には多々あります。

「気を遣う」「忖度してしまう」「こんなことを言ったら叱られる」という自己防衛本能が、どうせ頑張っても感や、あきらめ感につながり、組織の活性化を阻害してしまいます。

社員数100名前後の我々のような中小企業にとって、最大のストレッサーは社長です。
そのことを私自身が自覚すると共に、ストレスチェック研究所のコンサルタントやアナリストからたくさんの指導やダメ出しを日々受けています。
現在では、社長室にこもることをやめ、営業チームの島に座り、社員との雑談コミュニケーションを増やしたり、良き聞き手になれることを目指し、日々努力している最中です。

そして、まだ小さな光に過ぎませんが、社員と共に、日本一の「働きがいのある会社」にすることが私の大きな目標になっています。

働きがいとは、好きな人たちと好きな仕事を切磋琢磨しながら継続していくこと。

ストレスチェック研究所の算出する数字を見ながら、感じています。

2022年7月1日
株式会社ドクタートラスト
代表取締役社長 高橋